1.遺言とは 遺言制度は、人の生前における最後の意思表示に法律効果を認めて死後にその実現を図るものです。被相続人自分が生前に蓄えた財産(相続財産)を跡に残るものに承継させるわけですから、どのように相続財産を分けるかを被相続人が決めるのは、当然のことといえるでしょう。
ただし、遺言が効力を発生するときには相続人はすでに死亡しているわけですから、その内容や効力の有無について争いが生ずる恐れもあります。そこで民法は遺言に厳格な方式を定めています。(後述)その上で遺言事項にていて方式に沿った遺言がなされている限り、その内容を尊重し実現を図ろうとするものです。 ![](images/line004.gif) 2.遺言の中にどのようなことを記すことができるの?
遺言事項は、法律で定められた次の事項に限られます。
(1) 相続に関する事項
イ.相続人の廃除または排除の取り消し
ロ.相続分の指定又は指定の委託
ハ.遺産分割方法の指定又は指定の委託
ニ.遺産分割の禁止
ホ.共同相続人間の担保責任の指定
ヘ.遺贈の減殺方法の指定
ト.特別受益の持戻しの免除
チ.祭祀承継者の指定
(2) 遺産の処分に関する事項
イ.遺贈
ロ.呪医者が負担付遺贈を放棄した場合の指示
ハ.財団法人設立のための寄付行為
ニ.遺言信託の設定
ホ.生命保険金受取人の指定又は変更
(3) 身分に関する事項
イ.認知
ロ.未成年後見人又は未成年後見監督人の指定
(4) 遺言の執行に関する事項
イ.遺言執行者の指定又は師弟の委託 ![](images/line004.gif) 3.遺言に方式ってあるの?
遺言の方式には大きく分けて、普通方式と特別方式があります。ここでは、普通方式を説明します。
(1) 普通方式の遺言の比較
イ.自筆証書遺言
遺言者が、遺言の全文日付及び氏名を自著し、押印するものです。(民法968条) (特徴) 簡単に作成できる反面、遺言所が発見されなかったり、紛失、偽造の恐れがあります。
従って、その遺言が有効なものかどうかを判断するため家庭裁判所の検認手続きが必要となります。 ロ.公正証書遺言
承認2人以上が立会い、遺言者が、遺言の趣旨を公証人に口述し、公証人が筆記して遺言者及び承認に読み聞かせ、遺言者及び証人がこれを承認して署名押印した上、公証人が署名押印する。(民法969条) (特徴) 遺言の内容が明確であり、紛争の恐れが少ない。また、原本を公証人が保管するため、紛失、偽造のそそれが少ない。従って、家庭裁判所の検認手続きが不要となる。 ハ.秘密証書遺言
遺言者が、遺言書を作成して署名押印の上、封印し、封書を公証人及び2人の証人に提出し、自己の遺言書の旨、及び氏名・住所を述べ、公証人が日付及び遺言者の口述を封書に記載し、遺言者及び証人とともに署名押印する。
(特徴) 遺言の内容は秘密にできるが、作成したこと自体は秘密にできない。偽造は防止できるが、方式に反していたり文書の意味が不明朗であったりすることがあるので、効力が問題となることがある。家庭裁判所の検認手続きが必要となる。 遺言に関する問題
問題1、ワープロで作成した遺言書は、有効となるか? (答え)民法968条には、「遺言者が、遺言の全文日付及び指名を自著し、」となっているので無効である。また、他人(たとえば配偶者)が代筆したものも無効である。 問題2、日付の欄に平成19年12月吉日と記したものは有効化? (答え)無効である。遺言書は何度でも書きなおすことができ、最新の
ものが効力を有すると解されているので、日付が特定できるものでな ければならない。 問題3.書名はペンネームでも良いか? (答え)民法968条には、「氏名を自著し」とあります。遺言所に氏
名を記すのは、遺言者を明確にするためのものです。普通氏名の自書 は戸籍に載せられているものを書くべきですが、単に氏や名だけでも あるいは質問にあるペンネームでも遺言を作成したものが誰であるか を特定できれば良いとされています。ただ、後々争いを避けるため戸 籍上の氏名を記すのが賢明でしょう。 問題4.押印は、実印でなければなりませんか?
(答え)968条には、「氏名を自著し押印する」とあります。従って 押印していない遺言書は原則無効です。(判例の中には特別の事情の ため押印のないものも認めているケースはありますが原則無効です) 押印を用件としたのは遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、 重要な文書については作成者が署名した上その名前の下に押印するこ とによって文書の作成を完結させるというわが国の慣例によるもので す。 では、実印が要求されるのか、という点ですが原則必要ではありません。単に認めでも良いとされています。ただし後日遺言の真相について争いが生じそうな場合は実印のほうが好ましいでしょう。 問題5.被相続人の土地や建物が夫婦の共有とされている場合、 夫婦共同で遺言所を作成できますか? (答え)遺言は、各自が単独で自由な立場で作成すべきですから、全文
を2人共同で作成し、その下に各自が書名押印したものは無効です。 ただし、同一の用紙に、各自別々に全文を作成し、日付を入れ署名押
印したものは共同遺言とはいえません。また、別熱に自筆遺言を作成 し同一の封筒に入れたものも共同遺言とはいえません。 |